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遊んだゲームの感想なんかを書き残していこうかと思っています

「千里の棋譜~現代将棋ミステリー~」紹介

棋士達の熱き生き様がそこにあった。

 

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「千里の棋譜~現代将棋ミステリー~」とは、将棋を題材としたADVである。コンシューマ版はケムコが販売。BGMは逆転裁判3でお馴染みの岩垂徳行氏が担当しており要所要所で非常に盛り上がる。

 

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あくまで「将棋が題材のADV」であって「将棋ソフト」ではないので注意。将棋がわからなくても楽しめるようになってる作品であり、主人公の一人であり将棋初心者の「歩未」ちゃんを通してちゃんと解説が入るので安心だ。僕も将棋はルールを知ってる程度なんだけど本作はちゃんと楽しめたので良かった!対決パートでは熱い実況解説に加えて棋士の心情描写が入って臨場感抜群。将棋わからなくてもバトル漫画のノリでさくさく読み進められるぞ。

二部構成が特徴で、大雑把に言うと第一部は消えた名人と伝説の真剣師(賭け将棋で生計立ててる人ね)の謎を追うお話、第二部は奨励会三段リーグの熱い戦いと将棋界で起こる「神隠し」の謎のお話、って感じね。

 

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実在の将棋界の有名人達が多数出演、また監修してるのも特徴。特にメイン監修の高橋道雄九段はシナリオにもかなり噛んでて強烈な個性を放っている。

 

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アニメネタでめちゃくちゃ弄られる人でもある!アニメ好きで有名な方らしい。

 

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お茶目なコメディリリーフとしても大活躍。人死にはあんまりないながらもシリアスな本編の清涼剤になってくれている。だいたいみっち噛ましときゃなんとかなる!

 

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おまけだけど加藤一二三九段も参戦!これひふみんでしょ!僕でも知ってますよ!

 

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この作品は奨励会三段「長野圭」とその幼馴染でフリーの記者「一ノ瀬歩未」のW主人公制をとっている。将棋に詳しい長野くんと将棋初心者の歩未ちゃんという組み合わせで適度に軽妙に解説も挟みつつ円滑に話が進んでいくのだ。(僕としてはこの作品は勝負に生きる棋士達全てが主人公の物語だと思うけどな!)

 

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第一部は将棋界のトップ棋士・「翔田名人」失踪事件の謎を追うのがメインになっている。迫る最強AI「飛燕」との対決を前に未だ姿を見せない名人。名人の形跡と謎のキーワード「千里眼」を追う長野と歩未、二人の周辺で、伝説の真剣師「江東将斬」の末裔が暗躍する。翔田名人の真意とは、真剣師の末裔の正体とは、そして最強AIを相手に人間は勝利できるのか?といったストーリー。

 

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ミステリー的な楽しさもありながら終盤にむけて熱く盛り上がっていく展開が見事。棋士達の心情描写を交えたバトル描写が最高で、一瞬に全てを懸ける勝負の世界と、静かに熱く燃える棋士達の生き様とが描かれている。

 

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僕が好きなのは「森方九段」かな。翔田名人に次ぐ実力者、将棋界のナンバー2にして長野くんの師匠ですよ。不器用ながらも将棋にかける情熱は誰にも負けない男。だんだんかわいく見えてくるからいろいろずるいキャラである。愛車の件は泣いていい。

 

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見切れ森方先生。

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第二部は奨励会三段リーグ編!新世代の棋士達に焦点が当てられている。リーグを勝ち抜き、プロになれるのは僅かに二人だけ。蹴落とさねば勝ち上がれない、一局が人生の明暗を分かつ残酷な戦いが待っている。
そして将棋界で度々起こるという「神隠し」。棋譜が残されていない幻の名人戦の謎を追って絶海の孤島へと足を踏み入れる一同。謎の「追及者」の存在。長野と歩未は、将来有望であった一人の棋士の失踪の謎に迫っていく。というストーリー。

 

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第二部は正直面食らった場面もあったんだけど、(○○○○○○とかアリな世界観なの!?という…。)バトル描写の面では第一部から大幅にパワーアップしている。

特に奨励会在籍期間が長く、ここで負けると後がない長野くんの勝負への熱量は凄まじいものがあり、時に自身の利害すらも無視して勝負の世界を優先する、本当に文字通りに自身の全てを懸けて勝負に挑むその姿勢はどこまでも熱く純粋で恰好良かった。あらゆる勝負事に通じる哲学があるね。自分の道を通す、ということは必然的に誰かの道を断つということで、そういう勝負の残酷さ、苦みも教えてくれる作品だと思う。

 

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勝負の世界に生きる棋士達全員が主人公と言える第二部は群像劇の様相で、交差する人間模様はよりドラマチックに描かれ、それだけに勝負の結末はより鮮烈に心に突き刺さる。相手と仲良くなって、人となりを知って、それでも道を断たねばならない。勝負に生きる人間が相手にできる最大限の敬意はやはり全力をぶつけることに他ならないのだ。

 

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将棋だからこそ描ける歴史の深さ、人間の生き様、勝負の楽しさ、熱さ、苦みがある。

人間が生きていく以上勝負は普遍的にそこにあり続けるし、勝者と敗者を生み出し続ける。誰しもが味わった経験があるであろう勝負の悲喜を扱うからこそ、この作品はきっと誰しもに「刺さる」、のだと僕は思う。将棋に限らず、勝負に挑み続ける人に是非とも遊んでもらいたい作品。おすすめ!

 

3000円、プレイ時間約20時間

プレイした日2020/03/01~2020/04/16

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