十九時十分をお知らせいたします

遊んだゲームの感想なんかを書き残していこうかと思っています

「ファイアーエムブレム封印の剣・烈火の剣」紹介

蘇る炎の紋章。

 

失った仲間は、もう戻らない。(所説ある)

ファイアーエムブレム封印の剣烈火の剣」とは、かつて任天堂の携帯機ゲームボーイアドバンス(GBA)で発売された手強いシミュレーション作品群である。後に発売された「聖魔の光石」と合わせ「GBA三部作」とも呼ばれる。現在はNintendoSwitchOnlineで遊べる(聖魔以外)。

最新作「FEエンゲージ」を遊び切って、なお猛り狂う情熱をどこかで鎮めようと思い初プレイ。素晴らしいエーギルが得られた。

無より躍り出て殴りかかってくる敵増援、勝手にズンズン進んで討死する味方援軍など数々の初見殺しに切れつつも、文明の利器「巻き戻し」等を駆使しなんとかクリアした。普通に操作ミスなどにもサクッと対処できるので非常に快適なプレイが約束されているのが素晴らしい。

 

増援は即行動して初見プレイヤーにリセットを強いる。それがサカのおきて

 

かなしい。

ファイアーエムブレム(FE)」シリーズといえば「失った仲間はもう戻らない」でお馴染み、戦略性と運否天賦とが混在する絶妙にシンプルかつ奥深い戦闘、限られた武器やお金、経験値などのリソース管理の難しさ、ランダム性のある成長要素の悲喜交々、そして何よりそれらを構成し彩る魅力的なストーリーとキャラクターから多数のファンを獲得した、高い中毒性を誇る手強い名作SRPG作品群である。

シリーズ初の携帯機での発売と相成った「封印の剣」はその中にあって中興の祖とでもいうべきポジション。シリーズの中核にあったクリエイターが色々あって抜けた微妙な時期に発売されるという逆境の中にあって、あくまで原点回帰で王道路線の戦記モノ。ユーザーのツボを的確に押さえ、新しい風を感じさせつつも地に足ついた堅実な作り。若干の粗さはありつつもここでしっかりした方向性を示し、基盤となるシステムを構築できたからこそ、その資産、素材で少ないコストから「烈火」「聖魔」という最大のリターンに繋がったのだから僥倖といえよう。

烈火の剣」は前作「封印」の前日譚であり、世界観やキャラクターを共有している。「封印」からグラフィックやシステムの多くを流用しており、一見した感じでは触り心地はほぼ同じ。しかしゲーム性は前作から大きく向上しており、テコ入れが始まって本当に丁度いい塩梅のキャラの強さや戦闘のバランス、コンパクトながら戦略性の高いマップ、それでいて手厚い初心者へのサポート、それはそれとしてやりこみだしたらシビアで考えることが多いガチ勢向けのプレイ評価など、シリーズ最高傑作との呼び声高いのも頷ける完成度の高さを誇る。

三人の主人公からなる三篇のストーリーは大ボリュームで、前作で既にやっているFE王道の「大戦争」が使えない故の、時代の「影」「闇」、歴史に残らない世界の暗部との闘いに身を投じる若者たちの物語は非常にアツく、規模の小ささに反比例して濃密になった人物描写は愛憎入り混じって一筋縄ではいかないものになっている。前日譚なので前作「封印」のキャラクターが重要キャラとしてもちょいキャラとしても多く登場し、若かりし頃の姿を拝めるのが非常に良く、キャラの人となりの魅力をさらに増大させてくれている。言わばめちゃくちゃ豪華な「封印」のファンディスクでもあるのだ。封印あっての烈火だけど、烈火あっての封印でもあると。

 

てことで「封印の剣」の紹介から。

舞台はかつて人と竜が共にありし地「エレブ大陸」。種の存亡を賭けた人と竜との戦い「人竜戦役」に人が勝利してから千年。エレブの大地は西の大国「エトルリア」と、東の大国「ベルン」との均衡の間で、有力諸侯の共同体「リキア同盟」、遊牧民が暮らす草原地帯「サカ」、傭兵業で外貨を得る貧しき土地「イリア」など各勢力が、多少の小競り合いはしつつも概ね平和に治めていた。

しかし当代のベルン王国国王「ゼフィール」が突如として挙兵。国王直属の配下「三竜将」を率いて各地へと侵攻を開始していた。混乱する他勢力の中でも、特にリキア同盟東部に位置する有力諸侯の一つ「フェレ領」はベルンに隣接しており、国境線では緊張が続いていた。

 

そんな折、フェレ侯「エリウッド」、その嫡子にして主人公の少年「ロイ」は、リキア盟主にして父の親友「ヘクトル」が治める地「オスティア領」に留学中であったところを、父に自領へと呼び戻されるところから物語は始まる。

ロイと、ベルン王妹「ギネヴィア」との必然の出会いから始まったベルン王国との本格的な戦争。戦いの日々の中で、地方の一貴族でしかなかった少年は心身共に強くなっていく。徐々に仲間を増やし、不安定な情勢下で綱渡りしながらも徐々に影響力を増していく。そしてその戦いは太古の「人竜戦役」の真実と、ベルンの秘宝「ファイアーエムブレム」にまつわる数奇な運命へとロイを導いていく。

 

ちなみに、オスティア留学時代のロイくんの姿は、「エクストラ」から選べる「チュートリアル」で確認することができる。ロイの師匠にしてエトルリアからオスティアへの駐在武官である「セシリア」さんによる戦闘指揮訓練の模擬戦という名目で、戦いの基本を学びつつ無理なく本編に繋がるという秀逸なチュートリアルである。ただ存在をガン無視することもできるので如何せん影は薄い…。でも、個人的には飛ばせないタイプより好き。

 

とまあ設定的には作中情勢下における地方の一貴族でしかないロイの、政治的な権力、発言権というのは正直そんなに強くない。しかしながら留学経験の賜物なのか物語開始時点のロイは人間としてかなり完成されている印象で、若輩ながらも聡明で優しく、思慮深く全体を見通しながらその時やるべきことを的確に見極め実行する極めて優秀なリーダーである。ピンチに際しても事前にしっかり根回しをし、相手の話の意図を汲み取るのが非常に上手く、正直こいつ一人で話を回せる完璧キャラである。スマブラでの熱血雄叫びキャラはどこから出たんだ。

 

「ロイ一人で回せるんじゃね?」という初見の印象はあながち間違いでもなく、メタ的な観点から見ればロイが優秀でないと話が成り立たないというのは実際そうである。というのも、封印は「失った仲間はもう戻らない」を比較的忠実に守っている作品なのだ。「封印」において、「仲間ユニットになった」その時点で「死んでも問題なく話が回るようになる」、つまりシナリオ上における役割をほぼ喪失してしまう。

主人公なので死んだらゲームオーバーのロイを除いては、ほぼ非戦闘員のお目付け役、兼輸送隊の「マリナス」、護衛対象のベルン王妹「ギネヴィア」、謎の吟遊詩人「エルフィン」など、倒されてもシナリオ上は死なない扱いのキャラ或いは非加入ユニットだけで壮大なシナリオを頑張って回しており、苦しい努力が伺える。悲しいかな、仲間になるキャラはもれなく加入する瞬間がその存在感のピークである。

この縛りは、リキア盟主ヘクトルの娘にして本作ヒロインの「リリーナ」ですら例外でなく、加入章で死んでも問題なく話が進んでしまう。(外伝章には行けなくなるけど…)

後の作品においては「死なない扱いのキャラ」を増やすなどして対応していることが多いが、それはそれで「どうせこいつ死なねえからな…」といった気持ちにもなってしまうのでなんとも歯がゆさがある。

 

しかし、そういった不本意ながらその他大勢の立ち位置に甘んじている味方キャラクター達が、その存在の魅力を最大限発揮してくれるのが、ある意味本作の目玉「支援会話」である。隣接させて仲良くなったユニット同士を会話させると仲良くなって、互いが近くにいると連携効果でどっちも強化されるというシステム。戦略的にも重要だし、キャラの掘り下げにもなっているという、もはやFEになくてはならない要素である。「キャラ性のあるウォーシミュ」的なところにアイデンティティを持つシリーズなので、戦略とキャラ性どっちも外せない。

好評故に現代に至るまで受け継がれているこのシステム、何気にこの作品がお初である。「味方同士の隣接時に会話させると恩恵が得られるイベント」は「聖戦」にもあったけど、明確にシステム化した点と全キャラにその機会を公平に与えた点の功績はあまりにも大きい。

 

とはいえ少なくとも今作の段階においてはまだまだ粗削りなシステムで、何かと不便も多い。

「内容自体は面白いものの、昨今の支援会話と比べるとボリューム的には簡素」

「誰と誰が仲良くなる可能性があるのかゲーム中でわからない」

「“初見でわかりっこない意外な組み合わせ”ほど隣接させても中々仲良くなってくれないので気付けないし仮に知っててもくっつけるのが大変」

「1マップ中で軍全体の仲良くなれる限界値が決まっており軍全体でそれを食い合うので使わないキャラを必要以上にくっつけてはいけないとかいう本末転倒」

「1キャラあたり支援が5回までという制約のため、使わないキャラとくっつけると無駄になるし、全ての支援を見たいなら何周も何周も遊ぶ必要がある」

「くっつけたらくっつけたで、今作のゲームバランスの都合上、強化値があまりにも大きすぎるためゲームバランス崩壊級にキャラが強くなりすぎる」

等々々…。バランス的には正直大味と言わざるを得ない。しかし、実際に何周か遊んでみた感じそんなに悪くない。むしろ良い。大味なりに、これはすごく楽しい。

まず「強すぎ」ってのがいい。戦場で心を通わせた最強の二人の連携が弱かったらだめだろ!それでいいよ!バラバラの二人がだんだん仲良くなって最強の二人に成長していくこのカタルシス

「1人5回」の制約も「次はコイツとコイツでいってみよう、どういう会話になるのかな」と再プレイの導線になっており、実際「誰と誰で支援を組むか」は戦略上非常に重要な悩ましい選択のため、「誰とでも無限に組めます!」よりもプレイヤーがマネジメントする一要素としてより重要性が高い。

文章量も後年の作品と比べると控え目ではあるけれどむしろちょうど良い。本筋であるゲームプレイを阻害しないテンポ感はむしろ良く考えられている。拠点でなく戦場で交わす会話としてはむしろ妥当なくらいだし、短いながらにしっかり内容も面白い。一度読んだことのあるものでも周回プレイ時についついまた読んでしまう。この辺、「風花雪月」あたりの、内容自体は凝ってて非常に面白いんだけど、周回プレイで何回も何回も観てると長すぎて体験として重くなりすぎるのでスキップしてしまいがちな支援会話とは対照的に感じられる。

 

おすすめはイリア傭兵騎士団所属のソシアルナイト「トレック」さんの支援です。天然ボケの癒しキャラであると同時に、自らの命を売りに出すことでしか命を繋ぐ術のない、傭兵という稼業の根本的な矛盾を示すかのような死生観の特殊さが垣間見られる、面白い会話が沢山見られて良いですね。

 

トレックの十人並の顔で思い出したけど、ナンパ僧侶の護衛をしている「ドロシー」ちゃんも好きです。芋っぽい顔の女の子はFEだとかなり貴重だ…。ぶっちゃけストーリーには全然絡まない存在なんだけど。ただの普通の、健気な女の子で、でもその子なりの出来ること、闘いがあるといったような。所属も目的もてんでバラバラの集団を率いて戦うゲームにおいてこういう「一般人視点」ってすごく魅力的だな、と。

 

わかめも好き。

 

SRPGとしてのバランスは、よくはないけどいいかんじ…楽しいアンバランスとでも言おうか。紋章リスペクトなだけあってシンプルながらも味わい深い構成に仕上がっている。

複雑なスキル等はなく、純粋にステータスの強弱でキャラの強さを表現している。歴戦の老兵はステータスが高いが、成長が鈍く後進にだんだん追い抜かれていく…といった感覚がいやにリアルである。「ただの数字」でこれだけの体験を紡げるならばもはや芸術的とまでいえる。

例に出したジェイガン枠の老兵「マーカス」は最終戦にはとても連れていける性能ではないが、若輩者に連れ立って敵に削りを入れつつ、若造にはまだ任せられないような強敵は強力な銀の槍で仕留めるなど、後進の育成面で獅子奮迅の活躍をする。FEにおけるステータスは単なる強さに非ず、そのキャラクターの生き様、矜持も感じられるのが良いところ。

弱い弱いとよく言われるセシリアさんも、後方サポートに徹していればすごく有能で小器用。力よりも知恵で戦うセシリアさんのキャラにすごくマッチした性能だ。お気に入り。

 

マップ構成は全体的に丁寧で出来が良く、村の訪問や説得、お買い物などその章ごとに適度なタスクが発生し、無理なく解決可能な範囲で適度に焦らされる。凝ったギミックはそんなにないけど、シンプルに楽しい。シンプルな良さがあるゲーム。

ただ敵の増援が何もないところから突如としてスポーンし、そのターン中に殴りかかってくる初見殺しがあまりにも多いのは流石に理不尽としか言えない。次やったらこっちも無からエーデルガルト召喚して狂嵐するからな。

「クックック、そろそろ南から増援が到着する頃合いだな。奴らの驚く顔が目に浮かぶわい」とか敵将が事前に言ってくれるならまだいいし、実際ちょくちょくあるんだけど、ゲーム中殆どの増援即行動は無言でかましてくる。巻き戻し機能がなかったら切れてたと思う。マップが全体的に広く、長期戦になりがちなので、しょうもない増援即行動で努力が無に帰したときの喪失感も大きい。

マップが広いので、足の遅いアーマーはまだまだ冬の時代。馬に乗って戦う騎兵を重用すると中々快適に遊べる。体格の低い味方を運搬できる「救出」システムがあり、騎兵は馬に乗ってるのでこれが得意。それでいて自分が救出される際には馬の体格を参照しないので救出しやすくされやすいというシステムに愛された存在。ナチュラルに馬を見捨てるな。

戦闘面においては、全体の傾向として敵味方共に武器の命中が悪くて攻撃が当たりづらく不安定。故に当てやすくて軽い剣が強くて、重い斧が弱い。表示される命中率がシンプルに嘘なのもこの傾向をより強くしている。

というのもこのゲーム「実効命中率」の概念があり、例えば命中70の攻撃が当たるかどうかの判定をするなら、乱数の100面ダイスを振って70以下なら当たりとするのが通常のところだが、本作品においては100面ダイスを2個振ってその平均値を取る。つまり1%を当てたいならダイスを2個とも1を出し、平均値1としなければ当たらないということ。(※ほんとは0~99だし切り捨ても考慮しないといけないけどメカニズムとしてはこう)

一見意味がなさそうな実効命中率であるが、これを採用することによって得られるものは「当たりそうなものはだいたい当たり、外れそうなものはだいたい外れる」というプレイヤーの感覚である。命中率99%なんて言えばほぼ当たるものだが、当たり前だが100回もやれば1回外れる。しかしプレイヤーの「確率に裏切られた感覚」は実際の何倍にも大きく感じられるだろうし、実のところ「実効命中率」はプレイヤーの感覚に対して意外と素直だったりするのだ。

とはいえそういった確率の歪みがゲームプレイに及ぼす影響は決して小さくはなく、敵の命中率をだいたい外れそうな程度にまで下げ、味方の命中率をだいたい当たりそうな程度にまで上げればそうそう戦闘に負けることはなくなってしまう。所謂回避ゲーである。

回避ゲー故、素早いユニットが絶対的に強く、逆は弱い。格差社会である。また、支援効果によって命中や回避を盛れるかどうかも大事になってくる。この回避ゲー故に素早い剣使い…ソードマスターが最全盛期。全部躱して全部当て、しかもクリティカル祭りとくれば、どうあがいても無双プレイになってしまう。

 

しかし。しかしである。僕は思います。強そうなやつが強くて何が悪いのか。剣豪ですよだって。強いじゃんそりゃあ。弱かったら詐欺じゃん。(いろんな奴への悪口)

だから「封印の剣」のゲームバランスがいいかって聞かれたらNOなんだけど、封印のソードマスターが歴代最高のハチャメチャに楽しいことは間違いない。是非とも堪能してほしい。

 

同じくスピードキャラで、剣と弓で戦うサカ地方の草原の民「遊牧騎兵」もソーマスとおんなじくらい強い。モンゴル人が強いゲームだ。というか、ソードマスターもだいたいサカから来た人だ。モンゴル人が強いゲームだ。

今までのFEにあんまりなかったオリエンタルな意匠、遊牧民族に特有の父なる天と母なる地に対する信仰、草原の風と共にある誇り高き生き様、と全部恰好よくて良い。格好いいやつは強くていいんだよ。

 

とまあある意味原点回帰の「剣優遇・斧不遇」ゲーだけど、斧使いにも見どころがないでもない。三竦みがあり、剣に有利な槍に対して有利を取れるのが斧なのだ。

作中で長く敵対するベルン王国は竜騎兵の国。竜騎兵はその高機動から高威力の槍でグサグサ刺してくる強敵である。最強のソードマスターといえどそう何匹も相手はしてられない。こんなとき、斧使いがいたらなぁ~~!

パラディンである。

騎兵の上級職パラディンや剣歩兵の上級職勇者がサブウェポンとして片手間に使う程度で正直斧の需要は賄えてしまうため、どうにも斧メインのキャラは肩身が狭い。弱武器の汚名返上は次作「烈火」で斧の救世主「ヘクトル」の登場を待つこととなる。

ちなみにエンゲージを直前にプレイしていたので、ドラゴンナイトが大量に出現するマップは「ここエンゲージで出たとこだ!」と謎の感動を覚えた。やるじゃんエンゲージ。

 

周回プレイも中々楽しい。途中でルート分岐が2回あって味変できるし、一度クリアすればハードモードが解禁される。

封印ハードは次回作以降の嫌らしい感じではなく、純粋に敵が強くなるだけの簡素なもの。とはいえバカほど強化されるので大変だ。序盤も序盤から雑魚一匹に総力戦を強いられる厳しいバランスなので、老兵マーカスが大活躍する。ジェイガン枠の鑑。ジェイガンよりジェイガンだよお前。

とはいえ中盤以降ともなれば自軍も育ってくるので難易度はだいぶ下がる。軌道に乗せるまでが一番楽しいのはどんなゲームもそうですね。

ハードブースト対象キャラが中盤以降続々加入するのも大きい。敵増援として登場し、説得で仲間になるキャラが敵同様に強化され、自軍加入後も強いままという仕様があり、ブースト対象が悉く元から強いキャラばかりなので仲間にすれば天下無双。引くほど強いが、序盤が苦し過ぎるだけにカタルシスが感じられ良い。

あくまで自己満足のプレイ評価機能はいい感じに緩くて丁度良い塩梅。評価の一つ一つはかなり条件が緩く、達成は難しくないが、全達成しようと取り組むとバランス取りが難しく苦しめられる。ボスをチクチクすると強くなるけど戦闘評価は下がる、サクサク攻略するとキャラを強くできない、など周回プレイする中で相反する目標のバランスを取りながら段取りの効率をどんどん良くしていく過程があり、上達を感じられるので非常に楽しい。

都合5周ほどプレイしたが全然飽きがこない。基礎が出来てるが故の堅実な手応えを感じる名作。近年のFEはどうしてもスキルをもりもりするゲームになりがちかつプレイ体験が重い傾向にあるので(それも楽しさではあるが)、得られる栄養が全く違う。

古いと言えるほど古くもなく、新しいと言えるほど新しくもない作品であるが、それ故のいいとこ取り、今一番食べ頃のFEは「封印」であると言える。でも増援即行動は許さない。

 

そんなわけで見事シリーズの命脈を繋いだ「封印の剣」。その翌年に発売されたのが続編の「烈火の剣」である。

「封印」の舞台となったエレブ大陸の約20年前を描いた、世界観を共有した前日譚。

歴史に残らない暗部の闘いを描いた、シリーズにおいては異色の作風でありながら、ユーザーフレンドリーかつ手堅い作りと緩めの難易度から、入門用によくお勧めされる作品。実際良いと思う。三人の主人公が織りなす三篇の物語が楽しめ、ボリューム的にも大満足。前作から演出強化され一枚絵が沢山出るのも良い。

 

主人公はサカ地方ロルカ族の少女「リン」、フェレ侯子「エリウッド」、オスティア侯弟「ヘクトル」の三名。リンはこの作品が初出だが、エリウッドヘクトルは「封印」にも壮年の姿で登場している。エリウッドは「封印」の主人公ロイのお父さんで、ヘクトルは「封印」のヒロインリリーナのお父さんね。てことはロイとリリーナがくっついたら二人は親戚になるんだなぁ。

基本はこの仲良し三人組で話が進む。きっと風花雪月の三人組も仲良しなんやろなぁ。

 

これは封印のごほごほ言ってたやつです。

 

話の主役はあくまでエリウッドヘクトルリンの主人公トリオだが、プレイヤーの分身たる「軍師」も作中に登場する。存在意義は残念ながらあんまりなく影が薄いが、これが後の「マイユニット」にも繋がっていくことからシリーズの一つのターニングポイントと言える。

 

物語は「リン編」「エリウッド編」「ヘクトル編」の三篇。序章及び1~10章が「リン編」で、11章以降は「エリウッド編」「ヘクトル編」のどちらかに分岐する。最初は「ヘクトル編」を選択することができないが、「エリウッド編」をクリアすると解放される。「ヘクトル編」の話の流れは基本的に「エリウッド編」と同一で、追加の章や追加キャラクター、語られなかったヘクトル視点の話などを楽しめる、2周目以降に選べる事実上の裏面みたいなポジション。

 

「リン編」は、全滅したロルカ族の生き残り「リンディス(リン)」が、プレイヤーの分身「軍師」と出会い、リキア同盟キアラン侯の孫娘であることが発覚し、お家騒動に巻き込まれることになるお話。道中で出会った仲間達と「リンディス傭兵団」を結成。フェレ侯子「エリウッド」の協力も取り付けつつキアラン侯弟ラングレンに立ち向かう。

 

リン編はチュートリアルを兼ねたような作りであり、「ユニットの動かし方」から始まって「三竦みがあるのじゃ」「ペガサスは弓に弱いぞい」「宝箱は盗賊で取ると良いのじゃ」といったシリーズの基本を手取り足取り若干くどいくらい教えてくれる。ハードモードを選択すると敵の強さや難易度はそのままにこれら演出がスキップされるので、2周目以降はこちらを選択すると良いだろう。

 

大抵のチュートリアルは経験者には若干くどい程度で、従わなかったときのキャラクターの反応などが面白いのもあって楽しく流せるのだが、「強くなったユニットはアイテムで上級職にクラスチェンジさせると良いのじゃ」担当のハゲはかなりの問題児。「レベルマックスまで充分強くしてからクラスチェンジ」がセオリーであるのに、中途半端なレベルから勝手にクラスチェンジしやがるので困惑しかない。というか、仮に育ってたとしてもアイテムを勝手に使うな。

 

わかったよ…。

 

わかったって…。

 

うるせぇ!

 

とまあなんやかんやありつつも楽しいリン編。この段から登場し甲斐甲斐しく育てたキャラクターには当然愛着も湧いてくる。キアランの伊達男「セイン」は相棒の堅物「ケント」と凸凹コンビ。見境なくナンパしては軽くあしらわれ物語に笑いを添えつつ、決めるところではばっちり決める。こういうお約束に弱い。

 

続く「エリウッド編」はリン編の1年後が舞台。消息を絶った父…フェレ侯「エルバート」の行方を追う侯子「エリウッド」は、1年前のキアラン動乱時に面識のあったプレイヤーの分身「軍師」と再会する。

兼ねてから親友であるオスティア侯弟「ヘクトル」、自身の根回しもあって晴れてキアラン侯女となった「リン」らの協力も得つつ父の消息を辿るエリウッドであったが、その裏にリキア同盟で燻る反乱の影、そして闇で暗躍する暗殺組織「黒い牙」の存在を見出す。

 

実質11章からが本格的な闘いの始まり。支援会話もここから解禁される。リンディス傭兵団組も続々集って自軍がどんどん賑やかになっていくのが良い。リン編でキャラクターの人となりがしっかり描写されたことが大きく、細かく描写されずともそのキャラの自軍での在り方が容易に想像できて楽しく…、ユニットを死なせてしまったときの悲しみもまた深い。

 

前作にも増して面白会話の宝庫だが、流石に作戦行動中の雰囲気にはそぐわないギャグ会話も数多く一長一短。一方でキャラクターの掘り下げ要素としては着実に進歩がみられる。

精神的にも肉体的にも「少年少女」は比率として少なく、しかし「発展途上の青さ」を残し感じさせるキャラクターもまた多い。未熟ではありながらも、しかし自分の生き方、その在り方は既に決定付けられている「青年」の物語という印象が強く、支援会話がその印象を補強する。

自身の帰属する集団に対して誇りを抱いてる人が多いんだけど、大義よりもむしろ現実に等身大の切実さを感じさせるようなキャラクターの造形、描写の塩梅になっている。この辺のバランス感覚の鋭さ。それ故にギャグ会話がやや浮いて見えてしまっている面もあるが…。

 

テキストで言えば、シナリオが良いだけに誤字の多さはややネック。単純な誤字は勿論のこと、「ニノ」というキャラクターの「ニ」が漢字の「二」になってるとかいう謎のミスや、明らかにエリウッドの台詞なのにヘクトルが発言している会話があるなど、普通に興を削がれてしまうことがある。適宜脳内補完していこう…。

 

エリウッド編に入った辺りから、前作キャラクターも続々登場し始める。前日譚だからね。「封印」で親バカキャラだったバアトルは若かりし頃の姿で登場。いい奴だけどアホですき。

 

シナリオに絡まないまでも、小ネタ的にちょい役で登場してくれることもある。おするばんかわいい。

 

行商人時代の姿で登場する「マリナス」は、戦いはさっぱりだがテントで道具を預かってくれている。今作では手持ちから溢れた道具はマップにマリナスがいないと捨てるしかないので、結構戦略的に重要な存在。

明らかに動けないマリナス狙いで配置されている敵増援も多く、このおっさんを上手く守ってあげる必要がある。とはいえ前作同様死なないので放っておいてもある意味安心。

 

マリナスだけは枠を食わずに出撃可能で、生き残るだけでレベルが上昇。一定まで育つとテントから馬車にクラスチェンジできる。テントに稲妻が走るのがシュールだ。

攻撃できないのは相変わらずだが、馬車の段階でやっと移動ができるようになる。守り要員を置かなくて良くなるのは勿論、マリナス自身も相応に育っているはずなので寧ろ回避盾役としてそれなりの活躍が見込める。

烈火は出撃枠がかなり少ないので、枠を食わず配置できるだけでも有難い存在。

 

エリウッド編」クリア後の2周目以降は「ヘクトル編」が解禁。リン編終了後にどちらかを選択して分岐できる。エリ編までは難易度的にかなり優しめの作りだったが、ここからぼちぼち手強いシミュレーションになってくる。

ヘクトル編」はタイトル通りエリウッド大親友「ヘクトル」が主役。FEの主役といえば「剣使いで優等生タイプ、バランス成長で戦闘はそこそこ」マルス的な奴が基本であり、ロイもエリウッドもそこは外してこなかった。が、ヘクトル「斧使いでアーマー、一見乱暴にも見えるけど実は優しいオラオラタイプ、物理特化成長でアホ強い」である。めちゃくちゃである。王道のエリウッドがいるからこそはっちゃけたキャラにできたともいえる。

斧といえばへなちょこ、アーマーといえばアーダンという負のイメージを覆したゲームチェンジャー的存在である。プージは割愛。

 

ヘクトル編でも結局早々にエリウッドとは合流するので話の流れはほぼ同じだが、ちょくちょくヘクトル編限定の寄り道マップや追加キャラ、エリウッド編では明かされなかった事実など追加要素が挟まる割と満足感ある作り。

同じマップでも敵の配置変更などにより嫌らしく調整されていることが多い。難易度でステージ構成が全然違ったりするので、同じマップでもエリ/へク、ノーマル/ハードで構成が実質4パターンありやたら凝っている。

 

前作封印で全然似てないなぁと感じたバアトル、フィル親子。ヘクトル編限定で見られる夫婦の馴れ初めの後に改めて見ると感慨がある掛け合い。

 

ヘクトル編」のシナリオ的な魅力で言うとやっぱり情厚き男ヘクトルの存在感。大親エリウッドとの永遠の友情!実兄ウーゼルへの不器用な敬愛! 普段喧嘩しまくってるリンに対して時折見せる底抜けの優しさ!これは人気出るのも納得の男。これの後に封印をやるとまた味が出る。

意外と「相手の立場になって考える」をよくするタイプで、話す相手のことを本当によく見ている。「仲間を守る」を絶対の行動原則としていて、その為なら既存のルールやしがらみを躊躇いなくぶっ壊していく存在。なので仲間を脅かす悪いヤツに対しては「情け」とか「哀れみ」を見せず純粋に怒りを示す傾向にあって、その辺の強さと優しさの同居が非常に魅力的。同時にその確固たる姿勢が親友エリウッドの人の心を解きほぐし寄り添う柔和な在り方をも引き立てている。柔と剛、全くもって正反対の男二人が根っこの部分で共鳴しあうのを眺めるのは健康によいとされる。

 

ゲームバランス面では前作で強すぎた剣士が調整され、対して万年不遇のアーマーは鉄壁要塞の強キャラが投入。敵の攻撃をキンキン弾いてこれはこれで爽快だしかっこいい。前作と比べマップがかなり小さくなったことや、定点防衛マップが追加されたことなど環境的要因もアーマー躍進の理由としてかなり大きい。

まだまだ避けゲーながら受けをこなせるキャラも登場し、防衛で足の遅いキャラにも活躍の機会が与えられながら、進軍速度を要求される場面もちゃんとある。うん、ゲームバランスが良くなっているのは間違いない。…のだが。

 

何周もやるくらいには好きなんだけど、なんか微妙にギチギチしているように感じる。烈火。ゲーム的過ぎるとも言う。面白いのは間違いないんだけど…、贅沢な悩みだ。

まず出撃人数がすごく少ない。9人とか8人とかで、ハードだともっと少なくなり、7人とか5人とかで出撃させられる日もある。それでいて主人公のロード3人組が強制出撃させられる面はかなり多く、実質3人全員育てることは必須のため、出撃枠を圧迫してくる。折角魅力的なキャラクターが沢山いるのに、そもそも出撃させてもらえない。

出撃人数が極限まで少ない中、少人数で裁けるギリギリのタスク(敵の撃破、玉座の防衛、同盟の救出、村の訪問、お買い物、お宝の回収など)が与えられるわけで、実際これがギリ成立するかしないかというかなり計算されたバランスになっててそれは面白いしすごい、すごいんだけどさ…。ゲームバランスとかいいから20人くらいバーってユニット並べて大戦争したい気持ちにもなってきちゃうわけですよ。

で、敵の陣容は単体能力ではすごい弱いのが狭いマップに大量に出てくることでバランス取ってる感じで、こっちは少数精鋭かつ1マップ毎のクリア想定ターンがすごい短いので、どうやっても相手ターンに殴ってもらって反撃で敵を溶かしまくるゲームになる。それはいいんだけどどう考えても相手ターンの時間のほうが長い。

でもって評価システムがやたらとシビアだ…。そんなん気にしなきゃいいだけなんだけど、何周もプレイしてるとモチベも大事になってくるので…。

特にしんどいのが資産評価で、バカ高い一部クラスチェンジアイテムを使うと大幅に評価が下がるので評価狙いの時はある程度縛らざるを得ない。そうすると下級職止まりの奴らが発生するわけだが、そいつらを放置して少数精鋭で行くと大幅に経験評価が落ちる。それを解決するためには、ただでさえ少ない選出枠の中に経験値稼ぎ枠の下級職止まり達を割かないといけない…。ターン数にも余裕があるわけではない…。といったように、やりこめばやりこむほど要求でギチギチになってく。

特にヘクトル編ハード、通称「ヘクハー」は特にやばく、できることをギッチギチに縛られた上で「ルナ(高命中超必殺防御無視の魔法攻撃)」だの「ソードキラー(高命中高威力剣士特効斧)」だの持った万全の敵の相手をしないといけないので本当にきつい。数値的には封印の敵ほど強くはないはずなんだけど…とにかく忙しくて一匹一匹相手してられない。忙しさが楽しいときの方が絶対多いは多いんだけど、こちらの手の届かない位置で勝手に死ぬ同盟軍の救出などのストレスの溜まるマップも結構ある。(封印にもあったわ!!でもゲームオーバー扱いにはならなかったな…)

よって個人的には「しっかり調整されてでバランスがいいのが烈火で、バランス悪いが故に自由なのが封印」というイメージ。

 

なんとか頑張ってヘクハーはクリアしたが、これの評価Sはできる気がしない。やりたいけど!

ヘクトル編限定要素として外伝の外伝である「異伝」に進むことができ、物語の核心に迫る面白い内容なので是非とも踏みたいところだが、そのためには一定期間中に踊り子を育てる必要があり、足踏みが必須なのがネックだ。1ターンの密度が高い烈火でこの時間だけ虚無。

ネックといえば悪名高きマップ「夜明け前の攻防」は到着前にNPCが死ぬ可能性がある純然たる運ゲーであり毎回二度とやりたくないという気持ちにさせられる。

しかしそれでもしばらくするとまたプレイしたくなってくるのが罪なゲームだ。運否天賦、ままならないが故に愛おしい。神の賽に身を預けてこそ人間の無力と悲哀とは感じられる。

 

「封印」「烈火」通して、人と竜とが交わる物語が描かれる。優しさが故に人は狂い、弱きが故に人は群れる。「強大な個」というのは(往々にしてそれらは魅惑的であるが)極論すれば悲劇を構成する、運命の歯車の一つに過ぎない。竜、あるいはその力に惹かれる存在というのは「強大な個」そのものであって、その本質はどこまでも孤独で哀しいものである。

FEは弱き者たちの「群」の物語である。故に「個」の存在は、いずれ訪れる滅びの運命から逃れることができないだろう。しかし彼らに、ほんの少しでも、人の可能性を信じさせることができたなら…、その「哀れ」を、救う手段がその手に握られていたならば…。

希望は常に、炎の揺らぎの中にある。

 

ダウンロード無料(NintendoSwitchOnline+加入特典)

プレイ時間約300時間(封印)約170時間(烈火)

プレイした日2023/09/07~2024/01/18

store-jp.nintendo.com