十九時十分をお知らせいたします

遊んだゲームの感想なんかを書き残していこうかと思っています

「ファイアーエムブレム エンゲージ」紹介

未来を繋ぐ、指輪と竜の物語。

エンゲージしよう。

ファイアーエムブレム エンゲージ」とは、手強いシミュレーション「ファイアーエムブレム」シリーズの最新作で、春映画である。

FEシリーズは剣や槍やら魔法に竜の、中世風ファンタジー世界を舞台に、国家間の戦争を描くことが多い。リソースが限られる中で豊富な味方キャラクターを育成し、ランダム成長による悲喜交々を楽しみつつも、ユニット同士が恋人同士になっちゃったりしてそういう人間模様も楽しめることに定評のあるシリーズである。

そんな中今作エンゲージは歴代主役級キャラクターが総出演する、所謂お祭り作品であることが最大の特徴だが、固有の世界観とキャラクターを有し、これ自体でちゃんと完結する。

お祭り作品ではあるがシリーズのエントリー作品にできそうな…というのか、新規プレイヤーに対して導線を引こうという意図は多分に感じられる。お話はわかりやすいしチュートリアルも親切!…なんだけど、正直「これは暗黙の了解だよね…?」みたいなユーザーに投げてる部分がシステム面でもシナリオ面でも多く見られるので、個人的にはシリーズ経験者のほうが解毒しつつ楽しめるんじゃないかな…と思う。ファンサ要素も多いしなんだかんだファン向け作品やね。

結論としてはめっちゃ面白い!…んだけど追々愚痴も言わせてくれや!!

 

舞台となる「エレオス大陸」は4つの王国と1つの聖地からなり、異界の英雄を宿す12の指輪が存在している。かつて「神竜」と「邪竜」、そしてそれらに与する者たちによって戦争があり、神竜側が勝利。邪竜の王は封印され、神竜の御子は千年の眠りについた。

かの地では「神竜信仰」と「邪竜信仰」が興り、それらは対立している。

2種類の竜は何が違うの?とか言ってはいけない。いいやつが神竜でわるいやつが邪竜や。

竜族は普段は力を石に封じて人の姿を取っていて、本来の姿に変じるには竜石が必要なんだけどそれはもう常識だよな!」という体で話が進む。FE初心者に優しくない。でも青春は待ってはくれないんや。

 

主人公は神竜の御子「リュール(名前変更可)」。千年の眠りの後、例によって記憶喪失で目覚める。しかし邪竜もまた、復活の兆しを見せていた…。というお話。

 

話的にもゲーム的にも超重要要素が、タイトルにもなってる「エンゲージ」。竜族は指輪に眠る英雄「紋章士」を顕現することができ、紋章士は指輪をつけた人と一緒に戦ってくれるし心が一つになると合体する(エンゲージ)。顕現は竜族限定だけど、一度顕現した指輪を使うこと自体は誰でもできるというのがミソ。

その「指輪に眠る英雄」というのが要は、過去作の主人公格の皆さんであり、なんかフワッと精神体になってるけどなんかフワッと味方してくれる。なんでこんな状態になってるのかはあんまりよくわからない。精神体なのでごはんは食べられない。かわいそう。

 

キャラの発言的に原作終了後の世界から来てるっぽいんだけど、壮年期の姿が描かれてるキャラが若々しい姿で登場したり、かと思えば己の死期を悟ったかのような発言をする奴がいたりと基準はよくわからない。

 

こいつらは仲良しの状態で登場してほんとに良かったな!

 

ということでお話的には、強力な「12の指輪」争奪戦。国は4つあるけどそれぞれのルートに分かれたりはしない。それは前作や。

主人公の神竜は各国が管理している指輪を回収すべく各地を転戦するわけだが、当然邪竜も指輪が欲しいのでバトルになるというのが大まかな話。邪竜は「異形兵」と呼ばれるゾンビ的なやつを使役してくるので主にそれと戦う。当然「敵の手中にある指輪」も存在し、闇堕ち状態の英雄が見れたりしてこれは正直興奮した。

てことで指輪を有する各国に譲ってくれるよう説得に行くんだけど、主人公は信仰対象なので「神竜です」で顔パス。の上無条件で協力体勢。もっとさぁ~駆け引き的なことしようぜ。無駄に。

全ての国の王族に2人兄弟の子供がいて、続々パーティに加わってケツモチしてくれる。国が4つだから計8人。それぞれ専用の職を持ってる。

また全ての王族には1人につき護衛2人がセットで付き従っており、話には大して絡まないがこいつらも加入してくれる。8人の王族に対して2人ずつだから計16人。

 

てことで軍の内訳としては「様々なキャラが様々な理由から協力してくれる」というのは例として少なく、「主人公>王族>従者」といったように明確に命令系統がある印象がある。故にほぼ主人公の一存で進軍するしそれに口出しできる奴というのが実のところ存在しない。で頼みの主人公も「返してください!」とか「もう友達じゃありません!」とか幼稚園児の喧嘩みたいなことしか言わないのでてんで頼りにならない。

敵も敵でラスボスと直属の四天王以外碌にシナリオに絡めるキャラクターが存在してないので、シナリオ構成要員の内訳としては実質「主人公と取り巻き、ヒロインとラスボスと、なんか内輪揉めしてる四天王」でほぼ終わり。当然碌な敵将などいないので四天王がシフト制で何度も何度も敵将として出現し毎回取り逃がす。たまに「おっ今回は四天王じゃないな」って日もあるけどそれはゾンビ退治の日ですね…。

「急に土下座するイケメン」「急に歌いだす音痴」など刹那的に輝きを見せるキャラはいるがそれだけ。いなくても何ら問題ない。

主題であるエンゲージを行う紋章士もシナリオ的に別に大して扱いの良いわけでなく実質アイテムみたいなもん。国王が飴ちゃんみたいに指輪を投げて渡してきたり、タンスに入れといたはずだけどどこいったかなーとか全体的に扱いも杜撰。結局指輪について満足いく説明は最後まで得られないし、後出しのルールがガンガン追加されていく。

シナリオにおける内輪での会話はほぼ王族で進行するので平民の入り込む余地などなく、というかそもそも名有りキャラ以外に平民は存在するのか?というレベルで影が薄い。敵に襲われた村で村人に話しかけても「ここの茶葉は名産なんだぜ」だの「花が綺麗」だのほざく程度の存在でしかなく「国がある」という認識がまずできない。

一応対立関係にあってなんかフワッと戦争してる国々の話も出てくるんだけど、奪ったところで大しておいしくない貧しい国を「邪竜信仰してるから」でフワッと攻め、それは良いとしてもそもそも各々の信仰が「なんか竜だからすごい」以上のものを見出せず、何がしかの思想が伴ってるわけでは全然ない。そんな中信仰対象たる、フワッと偉いけど具体的に何したかはよくわからない神竜が行き当たりばったりに各国を徘徊する話、以上のものを正直見出せないところである。邪竜さんも邪竜さんでなんかすごい女々しいお方なので、なんでこいつも信仰されてんだという…。

ストーリーラインは一応シリアスなはずなんだけど人死にも出てる中ギャグやトンチキが出ても笑えないしどちらにも徹しきれない歯切れの悪さ。中二の頃作ったゲームを音読させられてるような羞恥に終始晒される。

たまにぐっとくるときはあるんだけど演者が巧いだけ。ヒロインの叫びの悲痛さであるとか、より強い悪に翻弄される道化であるとか、去り行く者と残される者との掛け合いであるとか…、素材が抜群に良いだけに惜しいものがある。死ぬ奴が5分以上喋るなって!まじで。下手に声がついてるせいで見てられない痛々しさになっている。

 

一応シナリオ的に盛り上がりがないわけでは決してなく、ヒロインのヴェイルちゃん周りは人間関係が濃くて面白いし、なんだかんだオールスターものなので歴代主人公が揃うシーンは流石に興奮する。主人公にしても、道中情けない姿を晒しながらも徐々に仲間を増やし、それぞれの人となりを受け入れ成長しながら前に進むその姿勢はどこまでも真摯であるし、12の指輪の英雄たちに負けぬ存在の格というのを徐々に獲得していく。

 

また個々のキャラクターについても愉快な連中が揃っており、強烈なファーストコンタクトからカッコよかったり時に湿っぽかったりと様々な一面を見せてくれるユナカや、「口調」が「特徴的」すぎるものの趣味に生きるその在り方や戦闘スタイルなどが奇跡的な配合率で噛み合って妙なカッコよさを醸しているゼルコバ、筋肉だの蛮族だの言われながらもただひたすらに優しくまっすぐな男ルフレッド、(人選は好み)等々一筋縄ではいかない奴らがキャラの大渋滞を巻き起こしている。

 

キャラ同士が仲良くなる支援会話においても各々の我が強すぎて、「どっちの属性が勝つかの実験?」て感じのものが多い。でも、「その人なりの優しさ」というのが見えてくるものが多く、今回の味方ユニットは不器用な善人の集団なんだな…という印象を抱く。

 

戦闘パートについてはいつもの感じで順当に遊びやすい。「アーマーは魔法に弱いよ!」「ペガサスは弓に弱いよ!」とかの説明を無理なくマップに入れるのが上手くていいね。「遠くが見えない索敵マップで夜目の効く盗賊が加入」「瘴気が強いマップで地形干渉できる指輪持ちが加入」等々、システムを説明しつつキャラの持ち味がしっかりわかるのが良い。

基本的にユニットの強さは「キャラの強さ+指輪の強さ」である。「足の遅いアーマーを、原作で馬無双してたシグルドの移動力で補強」「回復の手数が足りないので、癒しの力を持つミカヤを持たせて杖役を増やす」といったようにキャラと指輪の掛け算でユニットの性能が決定されるので非常に自由度が高い。当然アーマーヒーラーとかいった謎の生き物も作れる。

指輪は装備するだけで「シンクロ」状態となりステータスがアップしスキルも増えるので強力だが、数ターンだけ指輪と合体できる「エンゲージ」はさらに強く、必殺技は撃てるし原作武器使えるしスキルは増えるしでやりたい放題できる。

これにより発生する「エンゲージいつ切る?問題」がまた悩ましい。切れてもまた溜めなおせるから基本的には吐いたほうが得なんだけど、そうすると肝心なときに切らしてる場合もある…と、ゲーム通しての駆け引きに寄与している要素である。

 

「ユニットの性能」「指輪の性能」「武器の性能」等が絡み合ってダメージが算出されるので計算が複雑化してるのは否めないんですが、戦闘予測が見やすいのと各種性能の詳細確認を取りやすいので割と快適に遊べる。

「ユニットのスタイル」システムも良くて、書くまでもなく当たり前扱いされていた「ペガサスは飛べる」的なそりゃそうだろって要素も「ペガサスナイトは飛行スタイルだから地形を無視できるんだなー」という形で言語化した上で咀嚼できるのが強い。

ゲーム全体としてプレイヤーが知るべき情報は全て与えるというフェア性を感じる。特に昔のFEでよくあった「無から増援が湧き即行動で後衛を瞬殺してくる」がなくちゃんと召喚酔いするのが良い。ただしその分全体的に容赦がないバランスで、増援は尋常じゃない物量で湧くし、ボスはどいつもこいつも殺意が高く移動して殴りかかってくる。これらを指輪パワーで捌いていくのはとても爽快だった。

 

本筋に絡まない外伝マップというのがあるんですが、本作のこれは紋章士さんとの仲良し度の上限解放するためのものが主。紋章士が原作再現マップで試練を与えてくるので乗り越えて仲良くなるというのが主な流れ。

この原作再現要素が素晴らしく、割と印象的だったステージをピックしているので既プレイ者が「あったなぁこんなとこ」ってなる一種のファンサービス。

ただ、原作がだだっ広すぎる聖戦10章のマップがプラ板くらい縮んでて笑ってしまった。これは完全再現したらほぼ移動時間になってしまうので流石に仕方ないですね…。一応原作の隠しイベント位置に隠しアイテムがあったり、ユリウスとイシュタルらしきくそ強い敵ユニットがいたりしてファンサ度は高め。

…なんだけど、シナリオの流れとしてどれも不自然なのは否めない。

「原作ステージに似た土地に偶然立ち寄る→僕の元いた世界ではこれこれこういったことがあったんだ→君の力を確かめる!」の流れで、それはまあいいんだけど、12人いる紋章士全部同じ流れを使いまわし。DLC紋章士6人のステージも似たり寄ったり。

外伝ステージ自体も進軍方向と全然関係ないところに唐突に生えてきて、立ち寄ると上記の流れだから「なんで来たんだよ!」と言いたくなる。

話的にも模擬戦みたいなもんだと思うんだけど普通に殺してくる。どいつもこいつも「仲間との絆が大事なんだ」みたいなこと言いながら躊躇なく味方を殺してくるからだんだん腹立ってくる。くそがよ。

一応ゲーム的な観点から言えば、近年あまり見られない感じの古き良き高難度マップとか、平坦で狭くシンプルに「決闘!」といったマップとか、本編マップにあんまり見られない傾向のものが多くて、いつもと全く別の戦略が求められるわけで、新鮮な楽しさがあり、良いは良い要素である。

 

育成方面においてはプレイヤーの意向を反映させやすく自由度が高いのが良。

指輪の英雄と仲良くなると得られる剣や槍などの資質と、クラスチェンジアイテムさえ用意できればなんでも好きな職にクラスチェンジ可能。ちょろっと一緒に特訓するだけで簡単に仲良くなってくれるので資質は実質あってないような制約、好きなユニットを好きなように育てられるのが素晴らしい。レベルがMAXの20になっても、クラスチェンジで同じ職のレベル1に戻れるのでレベルの頭打ちは実質なく、「使えないキャラ」がいないのがいい。

…誰でも何でもできるというのは逆に言えば、全員が競合関係のライバルということでもあり、どうしても見劣りするキャラは出てきちゃうんだけどね…。強力な指輪の取り合いになっちゃうのが痛い。中盤以降の上級職加入組がやけに強いため、愛でもってその誘惑に勝たないと下級職加入組はしんどいかもしれない…。ヘタってもお助けキャラに乗り換えられるからそうそう詰まないという利点でもあるんだけど、愛着ってあるじゃん…。この辺FEだと珍しいバランス。

 

…なんかルイのスクショが多いな。強いアーマーって衝撃だよね。

みんな成長は良いんだけどクラス毎に設定されている能力の上限値が全体的に渋めで早々に頭打ち、宝の持ち腐れになりがち。数字が緑色(MAX)になると「えっもう…?」と少し悲しい気持ちになる。

ただそれ故に戦闘バランスが非常に良好になっており、敵も味方も極端なインフレを起こしにくく、終盤があんまり理不尽じゃないのが良い。アルテリオス計算式のゲームにおいて数字を絞ることは非常に合理的な選択だ。

その上で指輪のパワーを盛ってるほうが絶対的に有利だから、最終的にはプレイヤー有利のバランスかなーという印象。

ハード以下ならフリーマップが無限湧きするし、ルナはフリーマップ有限だけどクリア後は無限。お気に入りの子をカンストまで育ててみるのも一興である。幸いにしてハードルは低い。

 

拠点ではキャラクターと交流したり筋トレしたり釣りしたりできる。泳いだりキャンプしたりと皆思い思いの過ごし方をしているので見ていて楽しい。あと馬糞もすごい落ちてる。

好きなのが「料理」で、その日の料理当番が食事を提供してくれるんだけど、食うほうも作るほうも反応が微笑ましくて飽きない。ただ、成功すると一時的にステータスアップするという普通に攻略上重要な要素でもあるので、メシマズが当番に来ると舌打ちしたくなる。お前のメシのせいで世界の危機だよ。

 

出来の良い料理は「お弁当」にして戦場に持ち込める。一応回復アイテムとして使えるんですが、それだけでアイテム枠を食う上に、そんなの食べるくらいなら回復役に杖振りの経験でも積ませたほうが有用なので正直影が薄い。弁当がトリガーのスキルもあるがネタの域を出ない。そのくせ、食べないと腐っちゃうので蓄えておく理由がなく、武器屋のハゲにでも売却しておくのが一番マシという意味不明アイテムと化している。美少女の作ってくれたお弁当をハゲに売りつけるゲームだよ。

 

筋トレや釣りなどアクティビティ系はミニゲームとして興じることができるが、これらは正直出来が良いとは言い難い。というか、SRPGやりたくてFE買ってるわけでさ…。そのくせ、これらはゲーム中では数少ない「ノーコストでリソースを得られる」要素であるため、真面目に利益を最大化しようとすると避けては通れないというのがどうにも…。指輪の感じるとこを探すゲームもそういう点からあんまり好きじゃないかな…。

風花雪月の釣りもまあまあ虚無だったけど、下手にゲーム性というか干渉の義務が増すと心を無に徹せなくて虚無度が増すという矛盾性を感じる。

しかし「縛る」という選択肢もある!積極的に損をするには肯定的な理由が必要だ!これが人類の知恵だよ。

 

なんか生き物も飼える。有用なうんこが出る。

 

DLCを購入すると、本編と地続きで新たな紋章士と出会える「神竜の章」、本編と独立して高難度マップを楽しめる「邪竜の章」が解禁される。

 

神竜の章は本編の外伝マップに似た形式で、指輪じゃなくて腕輪に宿った紋章士との出会いを描く。クリアすると腕輪に対応する紋章士が仲間に。成長率が上昇する紋章士「チキ」が目玉だが他の紋章士も粒ぞろいで、カチカチのヘクトルや、囮指名で敵を操作できるセネリオ、地形操作できるカミラなど、単に強いだけでなく遊びの幅が広がる感じのものが多くて良。仲間にしたら存分に悪さをしよう。

 

ヒーローズより参戦の「ヴェロニカ」は特に面白くて、必殺技でガチャができる。射幸心煽っていけ。

星5だと英雄さんが出てきて、ユニットとして一緒に戦ってくれるのでテンションが上がる。…しかし一切台詞がないのでそこは少し寂しい。大まかな武器ジャンルを選べる以外は何が出るかはランダムなので、出たキャラによってアドリブで戦略を考える感じになって楽しい。

星3だと名無しのモブ兵が出てきて「誰…?」ってなる。それでも死なせて問題ないユニットは便利なので損はしてないが…。

 

邪竜の章は、滅びゆく並行世界を舞台に、邪竜の御子たる双子と共に「英雄が宿る7つの腕輪」を集める旅を描く。新規ユニットとして邪竜ツインズと、本編四天王「四狗」のそっくりさん「四翼」の面々が加入。本編キャラも使えるがレベル固定クラス固定の扱い。

所謂エンドコンテンツであり、配置の嫌らしさは本編以上で、難易度は数段高い。しかし単に難しくしただけではなく、一つ一つのマップが凝った作りになっていて、完成度の高さに唸らされた。これこれ、これなのよ。ユニットが成長しないのは寂しいがそれ故に繊細なバランス取りがなされている。

遠距離攻撃をいなしながら攻め上るマップ、三つ巴で漁夫の利を狙うマップ、急いで味方を救出するマップ等々、本編以上に豊富なシチュエーションに対する対応力を試される。

特に最終面は「敵を吸収しながら地形を破壊する超大型ボスから逃げつつ、大ボスに吸われる前に中ボスを倒し、中央で最終決戦」という超大作マップであり、最高難易度だと僕は7時間かかりました。7時間かかりました。マップ1つにだぞ。

敵ユニットを上手く地形破壊に巻き込めるか。どの中ボスから倒すか、あるいは諦めてボスに吸ってもらうか。安全策を取ってマップ全体を回るか、リスクを飲んで一気に攻め上るか。常に重大な選択に晒され続けるのでめっちゃ疲れる半面に体験の純度がすごく高い。

ユニットは撤退扱いでロストしないのは救いだけど、逆に言えばそれを前提に容赦ないマップを組んでるわけだから、キャラロストは難易度を上げすぎないようにする枷だったんだなぁという感想を抱かざるを得ない。

 

消滅が確定した異世界を舞台とした若干ダークめのシナリオは正直本編より面白い。このクオリティを本編でやってくれよ!

メインである邪竜の双子と四翼たちのような、世界から拒まれた存在が形成する疑似家族的な関係性の描写は繊細で面白かった半面、この作家さんは小規模な集団を描くほうが得意だったんだろうな…と思ってしまったり。

ちなみに並行世界は基本的に全てが逆転した世界なので、頼れる兄ちゃんは弱気野郎になってるし陽気な兄ちゃんはサイコ野郎になってる。あべこべ惑星かよ。心の在り方を反映して、キャラの立ち姿や説明文が変更されていて細かい。

邪竜の章クリア後は限定ユニットが本編で使える特典付き。…なんだけど、全員上級職なりたてくらいの強さで加入する。即戦力なのはいいんだけど加入時点で色を付ける余地がほぼなく、最速6章加入だと強すぎて無双、クリア後加入だと何しに来たんだという状態に。最速邪竜クリアできるなら本編は難しくないだろうし、クリア後に来られても使い道がなければどうにもならないので、どうにも噛み合いの悪さを感じる。オンライン要素で戯れに使うにはいいかもしれない。

 

ハードで1周して100時間ちょっと、ルナティックで1周してもう100時間くらい。堪能できたかな!面白かった。じっくり遊んでこれなので、パパッとやる人なら半分くらいの時間で終わるかも。

なんだろう、エンディングに至るまでの道程はガバガバなのに、終わってみると不思議と「いいゲームだったな!」という感想になる。読後感が爽やかだ。終わり良ければ全て良しの究極系。エンディングのアートワークと曲がめちゃ良かったから、それのパワーがでかいかもしれん。ずるい。

文句はあるけどまあ祭りだからな!無礼講ですよ。FE60周年とかの折に指輪の数を倍にして続編作ってくれな!末永く付き合っていこうぜ!

 

7600円、プレイ時間約235時間

プレイした日2023/06/17~2023/09/05

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