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遊んだゲームの感想なんかを書き残していこうかと思っています

「ファタモルガーナの館」紹介

最後まで地獄たっぷり!

 

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ファタモルガーナの館とは西洋浪漫めいた世界観と時代を跨ぐ大河的な作風を特徴とするサスペンスホラーノベルゲームである。

非常にダークな作品となっており流血、暴力表現が多く、プレイには注意が必要。またストーリーも非常に鬱々とした地獄を煮詰めたようなもので精神的につらくなるところもあり、万人におすすめできる作品では決してない。

しかし叙述トリックやどんでん返し、認識の逆転を多く用いたサスペンスの物語構造は見事、また終盤に向けて伏線を拾いながら徐々に盛り上げていく展開も巧みで、最後には大きなカタルシスを得て、爽やかな気持ちで読み終えることができる良い作品だと思う。

 

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作品本編は八部構成となっていて、1~4部についてはそれぞれ異なる時代の異なる人物たちの物語となっている。ただ共通しているのは呪われた館が舞台であること。館に住む者は必ず不幸になる。それを証明するかのように全ての物語は悲劇に向かって突き進む。

古ぼけた館で目覚めた記憶喪失の「あなた」は、館の女中と共に館の中を巡る。女中は語り部となって、かつてこの館の中で起こった悲劇を順々にあなたに語って聞かせる、というお話。

つまり1~4部は今からみて過去に起きた、もう過ぎ去ってしまった出来事のお話なので選択肢が殆どなく、あっても物語には影響しないので基本的に女中さんのお話をずっと聞いている形式になる。

 

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部を跨ぐごとに数十年、数百年と時間が経過し、登場人物もリセットされるのだが、全ての物語に共通して登場する人物が二人、存在する。館の女中は死を知らぬかのようにどの時代にも登場し、館で働いている。また「白い髪の少女」は転生を繰り返しながら4つの部に共通して登場する。白い髪の少女ちゃんは毎回酷い目に遭うからだんだんかわいそうになってくるぞ。酷い目に遭わないキャラのほうが少ないけどな!この作品!

 

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5~8部は「あなた」と「今」と「これから」のお話。館は何故存在するのか。呪いはこれからも続くのか。第一部よりさらに古い時代、館のルーツも判明する。怒涛の伏線回収、衝撃的なストーリー展開から爽やかなラストに繋がっていく。この辺はもうほんとに面白すぎてしばらく眠れなくなったわ…。

 

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悩ましい…。

 

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このゲームの選択肢、だいたいボケの選択があるのずるい。面白いし暗黒めいた物語の中で良い清涼剤になってるね。だいたい律儀にボケてくれるから楽しい。

 

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クリア後はBGMの歌詞の日本語訳を確認することもできるようになる。言い忘れてたけどこのゲーム、BGMが超いいんですよ!歌詞カードも雰囲気出てていい。本編の根幹となる超重要ポイントをサラッと歌ってたりもする。

 

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個人的に一番好きなのは第三部、ヤコポのテーマ曲。この作品、各部ごとにBGMの雰囲気をガラッと変えてくるんだけど、第三部はジャズっぽい曲が多くてかっこいい。全部好きだわ。

 

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本編を読み終えてもまだこのゲームは終わりじゃない。登場人物の一人「ヤコポ」を主人公とした外伝も収録しているのだ。

本編中で語られた物語をさらに深く掘っていく作品で、新キャラも交えて地獄の深淵を覗き込むような暗黒めいたゲームである。というのもプレイヤーはこの物語がBAD ENDで終わることしか知らないのだ。最悪の結末がわかっていながら読み進めることをやめられない、闇に誘う引力を持った作品である。

思い出を一つ一つ切り離す、いつか求めたものを孤独の中で次第に忘れていく、守ろうとしたものを自らの手で壊してしまう…。滅びと決別の物語といえる。

 

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ヤコポ外伝で一番好きなキャラは新キャラのジェレンちゃんかな。底抜けに明るい童顔の娼婦で頭空っぽのめちゃくちゃかわいい子である。創作世界において何らかの役割を与えて女性を造形すると聖女か魔女か娼婦になるみたいな話で、限りなく何かの原形に近い存在のように思える。

暗黒じみた世界観のファタモルガーナにおいて、明るくて可愛くて頭空っぽ、の三点のみで成立しているのはかなり異質でもある。それでいて、あるいはそれ故か、一番地獄の領域に接近している存在であり純粋でいてかつ歪な魅力のあるキャラクターといえる。

 

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そんなこと言っちゃダメでしょ!

 

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ジェレンちゃんのテーマソング、軽快でやたらと耳に残るのでこっちも好き。なかなかヤバい歌詞ですね…。

 

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ヤコポ外伝を読み終えてもこのゲームはまだ終わらないぞ!現代編があるんですねー!

ファタモルガーナの登場人物達が現代に転生し、悩みや葛藤を抱えながらも生きていくお話。呪いは解けても完全に救われるわけじゃない。苦しみや痛みはこれからの人生にもついてまわるだろうけれど、それでも魂にかけた誓いを守って皆生き続けていく。魔女の呪いの物語から、ただ普通に悩んで、苦しんで生きていく人々の等身大の物語になったのかな、と。本編からずっと読み続けていると大きな感慨を覚えずにはいられなかった。

本編での一連の悲劇に対するアンサーになっている作品で、本編中に解決しきれなかったあれやそれやに対して登場人物が皆それぞれの答えを見つけていく話に思えた。絵は本編とは打って変わってアニメっぽい感じになったけどこれはこれで好きかな。

 

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現代編を読み終わったら、最後のお楽しみ、ショートストーリーもあるんですねー!

平穏な話から本編に劣らない地獄までいろいろで面白かった。

個人的に一番好きなのは絵画マンことジョルジュ兄さんのその後のお話。飄々と生きて悲劇に干渉してこなかった男、ジョルジュの生涯とその業、恐ろしい話だった。トラウマメーカー、エメ様のその後にも言及があったのが良かったね。

 

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最後までボリュームたっぷりの地獄!館の呪いの引力に惹きつけられっぱなしで、最後まで続きが気になって気になって仕方ない、読みたいけどつらい、つらいけど読みたいというジレンマと格闘しながら、つらいつらい言いながら読んでた。

つらいけど面白い、サスペンスホラーノベルの超大作です。グロはあるけどビックリ系はほぼなく、きっちりサスペンスな展開で怖くさせる作風がほんとに良かった。ノベルゲー好きにおすすめ。おすすめ。

 

7590円、プレイ時間約60時間

プレイした日2021/08/03~2021/09/30

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