めっちゃ盛り上がるやつ!
「レッツプレイ!オインクゲームズ」とは、職人的アナログゲームメーカー「オインクゲームズ」が制作した4つのアナログゲームを収録したダウンロードタイトルである。
お絵描き人狼、「エセ芸術家ニューヨークへ行く」。
深海からお宝を持ち帰るすごろく、「海底探検」。
海底探検の発展形協力ゲーム、「月面探検」。
投資してお金をがっぽり稼ぐカードゲーム、「スタータップス」。
以上4本がローカルでもインターネットでもみんなで遊べちまうんだ。
デジタル版ならではの要素として、CPUを参戦させることもできる。みんなと遊ぶ前の練習にも便利だし、人数合わせにも重宝。ただしお絵描きゲームの「エセ芸術家」のみCPU非対応であり最低3人必要である。仕方ないね。
オンラインのマッチングが非常に便利で、知ってる人とも知らない人とも気軽に対戦が楽しめる。フレンドとそうじゃない人を混ぜて遊ぶことも可能。(プライベート部屋で人を集めてからパブリック部屋に切り替える)数合わせに入ってきてもらうということもできるぞ。ただし「エセ芸術家」など通話のあるなしで有利不利が生じてしまうこともままあるのでその辺はアンフェアにならないように気をつけよう。
全体的にアナログゲームとしてはやらかめのタイトルが多い本作においても、お絵描き人狼、「エセ芸術家ニューヨークへ行く」は収録作の中でも特にカジュアルで遊びやすい、ルールもシンプルで最初に遊ぶ一作としておすすめだ。ただしCPUは非対応なので注意されたし。逆に言えば人間にしかできない、人間だからこそできる、繊細な読みを楽しめるゲームと言える。
アナログ版においては紙とペンが必要で、エセ芸術家役の割り当てもアナログな処理が必要であったのでやや遊びにくさがあった本作。その辺をデジタルに処理してもらえるため気にせず遊べる本作は一番デジタル化の恩恵を得ているタイトルだと思う。
ルールは簡単!プレイヤーはランダムに選出された一人の「エセ芸術家」とそれ以外全員の「芸術家」に分かれて戦うのだ。仁義なきお絵描きバトル!
毎回お題があって、それをみんなで協力して描いていくんだけど、「エセ芸術家」だけはお題を知らされていない。
絵を描き終わったら最後に投票タイム!「エセ芸術家」を当てたら「芸術家」の勝利!…なんだけど、それで終わりじゃない。「エセ芸術家」がお題を当てられたら「エセ芸術家」の逆転勝利になるのだ。
つまり芸術家だからといってお題のまんまそのままを書いてしまうとエセにお題を当てられて負けてしまう、かといってお題から遠すぎると投票でエセに間違われてしまう、というアンビバレンツな葛藤こそがこのゲームの醍醐味なのだ。
エセ側の立ち回りもなかなか悩ましいものがある。お題がわからないので変なものを描いちゃうとバレてしまうから、あれでもこれでもない微妙なものを描くしかないんだよね。エセにバレないようにキワキワのものを描いてます!というアピールをいかにするかという繊細な立ち回りが求められる。
フレンドの立ち回りで「やべえな!」ってなったのが、お題が「夏」のときにあえてまんま雪だるまを描いてエセを攪乱しつつ、まんま逆を描くことで寧ろ芸術家アピールをするという妙手。僕がエセだったんだけどこれにはまんまと騙された。
対戦後は完成した絵をみんなで批評するのも面白い。最終的にはよくわかんない抽象的な絵になるんだよなぁ。いろんな人の思惑が交錯して、世界に一枚だけの変な絵が完成する。あれってそういう意味だったんだ!という驚きを受けることは必至。パーティゲーとして非常に完成度の高い作品だった。
「海底探検」は強欲な探検家となって深海からお宝を持ち帰るすごろくゲーム。シンプルな中にリスクとリターンの駆け引きや友情崩壊要素がしっかり詰め込まれている作品である。
プレイヤー達は順番に深海に潜っていき、そしていつでも引き返すことができる。要はチキンレースね。ただし一度引き返すともう潜ることはできない。いつ引き返すかの判断が肝心だ。
宝のマスを踏むと取るか取らないか選ぶことができる。「持ってる宝の数だけ歩数が出目からマイナスされる」ため、行きはあえて取らずに進み帰りにがっぽがっぽ儲けるという戦略も取れる。落ちてる宝のスコアは深く潜るほど高くなるからなるべくギリギリまで潜ろう。
ちなみにサイコロは1から3しか出ない特殊なやつの2つ振り。つまり最低値2の最大値6の期待値4ね。ということは宝を4個取った場合出目が上振れないと進めない、という事態になる。6個取ると動けなくなって詰むから実質お宝の最大所持は5だね。
また「お宝を捨てる」という選択肢も取れる。苦渋の決断だが宝の所持数を軽くすることで生存を取るという選択も重要なのだ。それでもダメなときはダメだけどな!サイコロの神に祈ろう。
酸素は全員で共有であり、尽きるとゲームオーバー。酸素が尽きるまでに潜水艦に戻れないとお宝は没収、スコアは0である。酸素は持ってるお宝の枚数につき1減るため、誰か強欲なやつがいるとそれだけでガンガン減っていく。
ラウンド制でありスコアだけはラウンドを持ち越せる。つまりスコアで有利を取っている場合にあえて最初から酸素をガンガン使って他の人を深く潜らせないようにする嫌がらせも十分選択肢に入る。(友情崩壊しても知らないぞ!)
逆にスコアで負けてる側はリスクを背負って深めに潜る必要があるんだけど、宝を取った分次のラウンドではマス目が短縮され深く潜りやすくなるため逆転の可能性も全然狙っていけるのだ。
めちゃくちゃ接戦になった試合。シンプルな中に勝負の熱さがしっかり詰め込まれてるね。やっぱりサイコロ転がすのって楽しい。改めてそう思った。
清く正しく、楽しい足の引っ張り合い。仲良く喧嘩しような!
「月面探検」は「海底探検」のアレンジ版で、足の引っ張り合いを楽しむ前作とは打って変わって協力ゲームに。全員が勝者になれるゲームなのだ!(あるいは全員が敗者になる。)
磁気嵐に巻き込まれ月面に拘束されてしまった船員達(プレイヤー)が皆で協力して散らばってしまった物資を回収し生還することを目指す、という設定ね。
一人でも死んでしまうとミッション失敗!全員生存こそが唯一の答えだ!
でもって「海底探検」のお宝回収の要領で月面の物資を回収していくんだけど、物資が破損している場合もあって基本的には基地周辺のものほど壊れている可能性が高い。(普通逆じゃない?)つまりリスクを背負ってでもある程度遠くまで回収に赴く必要があるのだ。破損していない物資の数がノルマを上回ればゲームクリア。人類の勝利というわけだね。
月面においては酸素生成システム(OGS)を使いこなすことが肝要だ。何をするにも酸素の供給が必要なゲームである。
持っている酸素カードを使ってダイスを振ると出た目の合計がアクションポイントになり、ポイント分だけ移動なりルート開拓なりOGS設置なりの行動を取ることができる。
設置したOGSマスで停止するとターンの終わりに酸素カードを補給することができるが、磁気嵐カードも混じっててこれを引いちゃうとOGSが故障してしまいこのターンの酸素供給もストップ。磁気嵐引くと詰む!って場面もままあるのでそのときは磁気嵐の神に祈ろう。磁気嵐の神って何だよ。
逆に言えば故障しても困らないタイミングで磁気嵐カードを引いておくというのも立派な戦略。戦略的にOGSを使い潰していくのだ。
「海底探検」と比べるとできることが多い分最初は何すればいいか戸惑うことも多いけど、少しずつ定石がわかってくる感じがあって、みんなで相談してクリアに向けて頑張っていく楽しさがあるね。
我々はミッションを失敗してしまった!月面調査隊はあなたの挑戦を待っているぞ!
普通にゲームとして面白いんだけど、なんというか少しずつルールを把握していきながら、いろいろ試してああでもないこうでもないとみんなと相談しながら進めていくというコミュニケーションそのものに楽しさがあるゲームに思えたなぁ。なんだかんだ初見時が一番面白いゲームなんじゃないかと思う。
誰か僕らの跡を継いで月面ミッションに挑んでみてください…。
「スタータップス」は企業に投資してお金を稼ぐカードゲーム!多分収録ゲームの中では一番カタめ、しかしそれだけに紙をしばく楽しさがギュッと詰め込まれている作品だ。個人的には最高傑作だと思う。
プレイヤーは投資家となって架空の6つの企業に投資しお金をがっぽり稼ぐ!一番お金を稼いだ人の勝ち!
スプラトゥーンとかにもあるけどこういう架空のロゴってわくわくするよね。
手札をガンガン場に出して好きな企業に投資していく。ただこのゲームでは儲けを出せるのは企業ごとに一番投資している1人ずつだけ。中途半端にいろいろやるよりは1~3企業に特化したほうが効率がいいわけだ。
要は総取りなんだけど、儲けの徴収額は相手がその企業に投資したカード枚数分。つまりギリギリまで競って勝ったほうが儲けが大きいというわけ。徴収したコインは価値が3倍に化けるので、いかに効率よく徴収するかが重要。世界を支配した者こそが勝者だ!
いらないカードはマーケットに流していく選択も重要。人が独占してる企業のカードは、自分の場に出しても将来的には負債になるわけだから、マーケットに送ったほうがダメージを抑えられるわけね。どのカードをマーケットに出すか、どのカードを自分のものにするか、この選択が勝敗を分けるのだ。
マーケットにあるカードは、後述する独禁チップのついているプレイヤー以外なら自由に取ることができる。逆にマーケットのカードを無視して山札を引くにはマーケットのカードにチップを支払う必要がある。
これが1枚2枚ならあんまり気にならないが、マーケットにカードが溢れる事態になると一変して山札を引くのが非常にリスキーな選択となる。つまりいらないカードをマーケットに送るという選択肢は自分が捨てると同時に相手への嫌がらせにも繋がっていくのだ。
チップが溜まったマーケットのカードを取れば、そこに置いてあるチップを総取りすることができる。カードはいらないけどチップ狙いで取るという選択もアリ。
カードに書いてある数字はその企業の全体のカード枚数。例えば緑のカバなら9だから、場の全部合計で9枚しかないことになる。つまり過半数の5枚を奪取すれば絶対勝てる。
逆に言えば過半数確保できればそれ以上は不要なのでマーケットにガンガン流していこう。相手が取れば将来的な利益になるし、取らなければチップの支払いを強制できる。利益の種を撒く感覚だね。
ここまでルールを聞いた感じ「先行有利じゃね?」って思うかもしれないけど、実はそうでもない。独禁チップという存在があるのだ。
企業別で場に出してるカード数が一番多い人に独禁チップがつく。独禁チップがつくとマーケットにでた該当企業のカードにチップを払わなくていい代わりにそのカードをとることができない。これでどうなるかっていうと、マーケットにあるカードが取れない分カードを集めにくくなる上に、相手の誰かがマーケットに出た該当カードを集めて転覆してくるリスクというのが常に生じてくるのだ。
つまり勝つべきは勝つべきなんだけど独占状態になるとやや不利なので、他人の後追いという形を取りつつ手札で逆転するのが一番良いということ。このリスクとリターンの兼ね合い、逆転の気持ちよさというのが非常に面白く、よくできたゲームである。
逆に独占のメリットとしてはマーケットに出た該当カードを無視して山札をタダ引きできるというものがあり、集める気のないカードを初手であえて独占することで積極的に山札を引いていくというのも立派な作戦であろう。
またトップの枚数が同じで引き分けだとその企業分は徴収がなくなるというルールがあるため、独禁ルールを利用して独占レース下位者が2位の人にカードを回して引き分けに持ち越させることを企むこともできる。これがフィクサーの闘い方だ!
「スタータップス」、ほんとにつくづくよくできたゲームで、面白すぎてつい紙版もポチってしまった。リアルでも積極的に紙をしばいていくぞ!
瞬間的な盛り上がりでは「エセ芸術家」に一歩譲るかもしれないけど、延々とやっちゃうのはこっちかなぁ。仁義なき紙しばきバトルが楽しめる作品だ。
まとめとしては、
カジュアルに楽しめるお絵描き人狼、「エセ芸術家ニューヨークへ行く」と、
収録タイトルの中ではややカタめだけど非常に熱いカードバトルが楽しめる「スタータップス」の二本が特におすすめかな。
定価が2000円ちょっとのゲームが4本入って2500円!しかもオンライン対戦できる!しかもしかも、後日アップデートでゲームが増えるとかなんとか!これはお得ですよ!(まあアプデは有料コンテンツの可能性もあるけどそれでも断然お得だと思う。)
それでいて元々の紙版の良さもあって価値が失われていない、むしろデジタル版を遊んでると紙版もだんだん欲しくなってくる。僕も買っちゃったしね。売る側と買う側の双方に得のある、非常に良い売り方だと思うなぁ。これはおすすめですよ!
2500円、プレイ時間約15時間
プレイした日2021/12/17~2021/12/19