バイアンサヤカ!
シルバー2425とは、須田剛一氏が手掛けた伝説のアドベンチャーゲーム「シルバー事件」と「シルバー事件25区」のカップリング移植タイトルである。ハードボイルドでサイコなクライムサスペンスADVの名作である。
まずは一作目、シルバー事件の感想から書いていきたいと思う。
感想を書く前に断っておくと僕はこのゲームのことを、大好きなんだけど実はよくわかっていない。というのもシナリオが不明瞭なままなんかよくわからないうちに終わってしまってなんじゃこりゃという感じのゲームなんだ。
でも雰囲気がほんとに好きな作品で、渋くてうらぶれた雰囲気がありつつもSFチックでサイコな感じもあって、それらが奇跡的なバランスで共存してリアルで不条理な世界観を構築してるやべーゲーム。舞台が1999年ということもあって世紀末の混迷というかままならない感じがあってそこもすごく好きだ。
万人受けする作品では決してないんだけど、ナイフで木を削ることのように、プリミティブな刺激を与えてくれるゲームだと思う。
かつて「シルバー事件」を起こした伝説の犯罪者「ウエハラカムイ」が精神病院を脱走。公安特殊部隊に所属する主人公は、後に「凶悪犯罪課」に配属されたりなんだりしつつカムイを追い、後にカムイの、そして自らの出生の謎にも迫っていく…。というストーリー。「24区」という架空の都市が舞台ね。
【Transmitter】は主人公視点、【Placebo】はジャーナリスト「モリシマトキオ」の視点、と表から裏から事件を紐解いていく。
主人公には名前を設定できるんだけど、専ら「デカチン」のあだ名で呼ばれることになる。(チンチラみたいな刑事のため。)よろしくなデカチン!
凶犯課の同僚の皆さん。みんな渋くてかっこいいんだけど一番好きなのはスミオくんかな。ナカさんも結構変態で好きです。
凶犯課は警察組織でありながら犯罪者の即時処刑「処分」を許されてる殺し屋集団のようなぶっ飛んだ存在である。
【Placebo】の主人公「モリシマトキオ」はちょっとダーティなところのある野郎で好みが分かれるとこなんだけど、コイツだからこそ迫れる裏の物語がある。ペットの亀を溺愛していたり人間臭さがあって好きなキャラだな。基本的に家でパソコンいじってるだけなのに一番真実に迫る変な役回りである。
基本的にプレイヤーを弄ぶようなところの多いゲームなんだけど、一番困惑したのは入団試験のシーンで、クイズを100問くらいいきなり出題される。クイズの正解不正解はシナリオに全く影響しないとはいえなんじゃこりゃってなるよ!
あと暗号入力のシーンね。
面倒くさすぎる…。
終似たような地形の塔十本を全部探索させられるシーンもなかなかキツかった。
そういう面倒くさいところも含めて演出になってるのがこのゲームの特殊性で一概に悪いとは言い切れないんだけど、それでも面倒くさいよ!
総じて不思議な魅力のあるゲーム。変わり種のADVを求めてる人にはピッタリの作品といえる。ぶっ飛んでるのに不思議なリアリティが共存し、ハードボイルドでいかれた世界観を構築している。
終盤の展開はいかれてんのか!?としか言いようがないレベルでガンガン人が死ぬし、話も抽象的でわけがわからなくなっていく。しかしその中にあっても独自の美学が常にあって、否が応でも物語に引き込まれていく。…いやこれ物語か?これほんとにゲームなの?なんだこれ。わからないけどとにかく面白い。前衛芸術みたいなもんだね。おすすめ。
シルバー事件25区も収録。携帯アプリとして配信されていた幻のタイトルである。
理想管理社会「25区」では警察組織、凶悪犯罪課や郵政事業組織、地域調整課の暗躍により表向きには平和が保たれていた。しかしタワーマンションで起こった一件の殺人事件を皮切りに、奇妙な事件が頻発するようになる…。というストーリー。
地域調整課は地域環境の調整の名の下に犯罪者を抹殺する「調整」を行う殺し屋集団であり、凶犯課と対立している。ぶっ飛んでんな。
シロヤブ、クロヤナギら凶悪犯罪課の活躍を描いた【Correctness】、ツキ、オオサトら地域調整課の活躍を描いた【Matchmaker】、第三勢力、モリシマトキオの視点から描いた【Placebo】の三篇からなる。凶犯課、調整課の2勢力にモリシマさんを加えた3つの視点からなる立体的な物語構成が面白い。
25区の「命が軽い街」感が最高。ガンガン人が死ぬし、登場人物みんないかれてる。
主人公のシロヤブくん(ジャブロー)もなかなかのいかれ具合で好きなキャラだ。中盤に覚醒してハゲになるとこで爆笑してしまった。
「飢えてる」ところが魅力なんだよなジャブロー。
キララちゃん出番は少ないけどかわいいからすき。
プレイヤーを挑発するようなふざけたUIもなんか一周回って好き。アルファベットの入力画面、上の多面ダイスみたいなやつですよ!打ちにくいったらありゃしない。でもなんかこの弄ばれてる感じがだんだんクセになってくるんだよなぁ。
イジワルな(というか面倒くさい)謎解きも多い印象で、なかなか思い通りにいかないゲーム。しかしこのままならなさが魅力でもあるんだな。この辺は前作にも共通しているね。めちゃくちゃトイレまでが長いコンビニは笑った。
追加エピソード【YUKI】では駅のホームに現れる亡霊に悩まされる女子高生「ユキ」とモリシマトキオの物語が描かれる。一般人視点だとめちゃくちゃ不審だなモリシマさん…!独立したお話だけどなんか重要設定をさらっと出してくるから困る。スラッシュの正体とか急に言うなよな!
最終章【black out】ではまさかのゴリ押しマルチエンドを採用。100通りのエンディングからお好みのエンディングを選ぶのだ。過去を殺せ。日常を殺せ。ネットを殺せ。
25区、登場人物みんないかれてるけど、それ故に究極的に人間臭くて魅力的。物語もクリフハンガー式に続きが気になる構成で一気読みしてしまった。25区もおすすめですよ。
「シルバー事件」、「25区」、二つの作品がセットになったシルバー2425。
意味が分からなくても面白い、独自の美学に溢れたクライムサスペンスADV。
感じてください。
6578円、プレイ時間約30時間
プレイした日2021/02/19~2021/03/16
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