ファミコン風ADV!
「ミステリー案内シリーズ」とは、ハッピーミールが制作、フライハイワークスが販売しているファミコン風ADVシリーズである。現在「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」と「秋田男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花」の2タイトルが制作されており、今回は二つとも紹介する。グラフィックは二作通して荒井清和先生。何とは言わんが…っぽい作品である。ちなみに僕は堀井ミステリー三部作は未プレイだけど、当シリーズは問題なく楽しめた。
やっぱり最初に目を引くのはファミコン風のグラフィック。風っていうかもうほぼファミコンじゃん!ここまでくるともう逆にめちゃくちゃ手が込んでますよ。ADVとしての手触りもしっかり昔っぽい!チマチマ総当たりする楽しみがある作品である。
それでいて舞台は現代なので「スマホつかえ」なんていうコマンドも存在。使うと写真撮ったりわからないことをネットで調べたりできる便利コマンドである。ついでにスマホでミニゲームを遊べるという要素も。事件のネタもちょいちょい今っぽい感じがあり、懐かしくも新しい、レトロとモダンの良いとこ取り的作品といえる。
最近のゲームは説明書がない!個人的にはすごく残念に思ってるんだけど、このゲームにはなんと電子説明書がついてくる!最近のゲームだから当時の説明書なんてあるわけないのに、当時のやつをスキャンしてるっぽくわざと作ってるのが凝ってて面白い。変なとこに力入れてるゲームですよ。ちなみに説明書画面では主題歌が流れるので必聴。
電子説明書にメモ欄あっても意味ないでしょ!
割としっかり遊べるミニゲームが収録されてるのも特徴で、伊勢志摩ミステリー案内では「忍者カイ」、秋田男鹿ミステリー案内では「トンデモ西ブー記」が遊べる。前者は雲に飛び乗ってひたすら上を目指すアクション、後者は面クリ型のカーアクションって感じ。どっちもファミコン風ゲームシリーズ「チョイコン」からの作品だね。
「チョイコン」のトンデモ西ブー記2はG-MODEアーカイブス版が出てる。1がないのに2から出てる変な作品で、秋田男鹿ミステリー案内のオマケで1が作られたという変な経緯を辿った作品である。僕としてはG-MODEアーカイブスが好きなので買ってみたんだけど、シナリオの毒が強すぎてあんまり合わなかったなぁ。人間が食えるギリギリの毒って感じがする。
話が逸れたけどシリーズ第一弾「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」の紹介からしていきたい。
伊勢志摩とあるけどストーリーは東京から始まる。
上野公園で見つかった変死体。刑事である「あなた」と部下であり相棒の「ケン」の二人は死体の形跡を辿る。ホトケの使用したと思われるロッカーに入っていた「黒真珠」を頼りに、二人は伊勢志摩へと赴く。観光したり美女と出会ったりしながらも黒真珠の謎を追う二人。果たして事件を解決することはできるのか…!といったお話。
主人公の「あなた」は性別不詳の無言系主人公。部下のケンにコマンドで指示を送ってお話を進めていく。主人公が無個性な分ケンがかなりのお調子者キャラになっており、観光大好きのケンが捜査そっちのけで現地のグルメを食べ歩くのがお約束。刑事としての本分を忘れてるわけではないんだろうけど、食欲に抗ってないよこいつ!ミステリー×観光ものって感じね。
あとケンは美女にも弱い。なんか惚れっぽいというか毎回現地の美女に惚れて話が進んでいく感じがある。羨ましいことに混浴イベントまであるぞ!
観光したいだけだろお前!
僕の好きなキャラは西沢さんかなぁ。胡散臭いジャーナリストのおじさんなんだけど、調子のよい性格でずけずけ話に首を突っ込んでくる、でも人間臭い魅力があってなんだか憎めないという人である。強かな生き方と不器用な内面とのギャップがずるい。
シナリオはなんか尺の都合を感じるというか、スピード感はあるんだけどややディティールを犠牲にしてる感じはある。しかしレトロでありながら新しい、刑事ものだけどむしろ観光しまくる、とゲーム体験としては無二、オンリーワンの魅力を放っている作品だと僕は思う。
僕のお気に入りのシーンは、主人公とケンと西沢さんとで居酒屋で捜査の進捗を話し合う場面ですね。一般の人間に情報漏らしすぎだろ!とは思うけど和やかで良いシーンだ。
続いてシリーズ第二弾「秋田男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花」の紹介。
刑事である「あなた」と「ケン」のコンビは東京で特殊詐欺グループを追っていた。二人は追走劇の末犯人の逮捕に成功するも、グループの首魁と思われる「ゼロ」は秋田に潜伏していた。ゼロを追い秋田は男鹿へとやってきた二人。現地で協力者である敏腕女刑事の「如月」&ベテラン刑事「茂木」と合流しつつ、観光しーの秋田美人に出会いーのしながらも二人は事件を追う。捜査はやがて過去の陰惨な事件へと繋がっていき…。というストーリー。なんかパターンあるよな!この調子で日本全国巡ってほしい。
観光したいだけだろお前!
前作からシナリオが大幅にボリュームアップし観光もボリュームアップ。ケンによるやたらと詳細な食レポを楽しめる。
協力者が登場したことでストーリーの深みが増した印象があるし、チームで戦ってる感があって良かった。
敏腕女刑事の如月さんはちょくちょく方言が出るのがかわいい。またケンとの友達ともライバルともいえる関係性が両者の人間性の掘り下げにもなっていて非常に良かった。
また引退間近のベテラン刑事である茂木さんも物語に渋みを添えてくれている。この作品は人間的な葛藤を抱えながら生きる一人の刑事の物語であったのかもしれないと思えるほど茂木さんの言葉には重みがある。あとおいしい秋田料理のお店も教えてくれる。
シナリオは前作から大きくボリュームと深みを増し、人間の汚さと気高さ、両方面から立体的にキャラクターを造形することに成功している。みんなどこか後ろ暗さというか影があるように感じる。それぞれにいろいろなものを失いながらもそれでも何かにすがり生きる人々の物語、正義を求め彷徨う熱き刑事たちの物語、という印象。
ということで二作品の感想を書いていったわけだけど、個人的には「伊勢志摩」よりは断然「秋田男鹿」派。なんだけど、秋田男鹿から先にやると伊勢志摩のネタバレが若干あるので個人的には伊勢志摩からやるのを推奨したい。チョイ役だけど前作キャラも登場するんだよね。ということで両方遊んでください。おすすめです。
やっぱり観光したいだけだろお前!
1000円、プレイ時間約5時間
プレイした日2019/01/29~2019/02/12
2000円、プレイ時間約15時間
プレイした日2021/03/26~2021/04/16