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遊んだゲームの感想なんかを書き残していこうかと思っています

「勇気の推理123」紹介

「勇気の推理 海苔」の元になった
初期の短編作品を3つ収録!

少年、勇気君が活躍する日常の謎
テーマとする異色短編ノベルゲームです。

(※公式による主張)

 

日常を疑え。

「勇気の推理123」とは、一部でカルト的人気を持つ推理ノベルゲーム「勇気の推理」初期三部作をまとめて一本にしたお得なソフトである。150円だよ。安いよ。

先に発売された「勇気の推理 海苔」のリメイク前にあたり、世界観や登場キャラクターを同じくするが展開はパラレル。連載漫画の読み切り版、あるいはアニメのパイロットフィルムとかいったものに近く、勇気の推理オリジンとでもいった風情だ。

三部作とは言うが、ボリューム的には全部読むのに一時間かかるかどうかってところだし、順番を選べるわけでもなく全部垂れ流しで1から3までノンストップで続く。感覚的には3つの小ストーリーをオムニバス風に楽しめる作品といった印象である。

 

「海苔」と共通するプロットとしては、「海苔の名産地「渡海街」で事件が発生し、天才少年探偵「勇気」がそれを解決する。」というもの。

…要約するとシンプルになってしまうね。そんな生易しいもんじゃないんだけどね。金田一少年を洗脳して一か月海苔だけ食わせて高橋邦子世界に解き放ったようなゲームなんだけどね。不思議だね。

「123」の特色としては、日常の謎をテーマとしていることが挙げられる。

日常の謎」とは本格推理小説におけるジャンルの一つであり、日常生活の中にあるふとした謎、そしてそれが解明される過程を扱った作品を指す。詳しくはウィキペディアを参照されたいが、「死」「殺人」「犯罪」が絡まずとも緻密で繊細なロジックでもって読者を惹きつけ続けなければならない、ある意味難しいジャンルであると言える。

 

ja.wikipedia.org

 

人間が日々を生きる中で取り零していく情報は、自分達が想像するよりも遥かに多い。「日常の謎」はそういった人々を取り巻く関係性や心理の「穴」、光の当たらない暗がりをフォーカスし、些細な気付きを得るとともに、心境の変化であるとか、過ぎ去っていく情景であるとか、忘れさられていく何かに思いを馳せることができる。光を照らすのは必ずしも正義の庭じゃなくたっていい。人間一人の心が晴れるだけだっていいじゃないかと。個人的にはそういうジャンルに思えるのだ。

 

まあ、人が死ぬところから始まるんだけどね。

 

渡海街は治安悪いからね。仕方ないね。

これが日常だよ。

 

何がやばいってね。アイコンからまずやばい。海苔だもん。ラッキーハプニングインパクトで負けてる時点でなんかやばい。普通「勇気」か「推理」っぽいアイコンにするでしょ。でも海苔だもん。

 

開始時点でもうやばい。どのボタン押しても全部同じ反応で実質1ボタン制。ページ送る以外の一切の行動はできないしセーブもロードもない。読みたいなら最初から読んでね!三部作だから1からだよ!というシステム。システムか?

途中選択肢が出るけど選びようがないので実質ないのと同じ。「選択肢がありますが」じゃないんだよそれは「ない」なんだよ日本語的には!

 

気軽ではあるな!確かにな!不正解でもやり直すだけだしな!

ある意味ADVのアタリマエを見直した一つの形なのかもしれない…。

 

ともあれこの作品はノベルゲーム!話が面白きゃいいんだよ!

ということで、123のストーリーを軽く紹介していこう。

 

「1」はまさに勇気の推理オリジンと呼べるストーリーで、後の「海苔」もこれをなぞったお話だと言えるかもしれない。

ごく普通の天才推理少年「勇気」はとある殺人事件に巻き込まれ、息つく間もなく爆弾の解体をさせられる。真相解明のため警察官であるヒロイン「茜」とタッグを組んだ勇気は、一連の事件の中に自分自身のルーツを見出す。勇気は因縁を断ち切るため、謎の存在「詐欺師」との闘いに身を投じていく…。といったストーリー。

「殺人事件」「爆弾処理」「詐欺師との闘い」など日常的なトピックがてんこ盛りなのが魅力ですね。これらのストーリーが爆速で進行してくのが本当に最高で、読んでるとだんだんハイになってくること請け合いである。

個人的には、ヒロインの茜さんが普通に魅力的なのがなんか腹立つね。身長180cmのフィジカル強い年上のお姉さんがグイグイ迫ってくるのめちゃくちゃえっちだと思います。フェチを感じる。

 

「2」は遊園地回!茜さんと遊園地でデートだ。羨ましい!しかし名探偵が遊園地、何も起きないはずがなく…。

見どころとしてはやっぱりヒーローショーかなぁ…。「自己防衛戦隊マモルンジャー」のショーは必見だ!自分の身は自分で守れという新時代のヒーローである。武器は護身用スタンガン。幼稚園で護身用スタンガンが流行ったらどうすんだよ。

そしてやはりというか茜さんがかわいい。年下の少年を遊園地に連れまわす大人のお姉さんですよ。好きでしょこんなの。こんな掃き溜めみたいな街で君と出会いたくはなかったよ。ただ世界観が狂ってるので、冷静に考えてボーボボでビュティが妙にかわいく見えてくるのと同じようなもんですよ。

「1」と比べるとあっさり終わっちゃう印象だけど、勇気の推理節は健在だし面白いから良しだ。

 

「3」はリゾート回!離島というクローズドサークルが舞台だが特に活用されることはないぞ!切り替えていけ!

なんとこの回では勇気のライバル的キャラである陽気が登場!服部みたいなポジションやね。「海苔」では唐突に登場してなんだこいつってなった陽気だけど、ちゃんとルーツがあったんだね!ルーツでも唐突に登場するんだね。なんだこいつ。

見どころはやっぱり勇気と陽気の推理対決かなぁ。基本的にどっちも同じくらい頭がおかしいのでどっちが勝つか全く読めない。あと、よくよく考えると別に推理してない。

これもやっぱり「1」と比べるとあっさりめ。「2」と「3」足したら「1」ってくらいのボリューム感だね。

 

「爆速テンポ」で「超展開」。鑢をかけてない木材みたいな荒さは感じさせつつも面白い短編ノベルの要所はきっちり抑えてる攻めのノベルだ。カイリキーのばくれつパンチみたいな存在。無粋なつのドリルをしてはいけない。

日常の謎じゃねーじゃん!というのは確かに、至極真っ当な突っ込みだ。でもちょっと考えてみてほしい。日常は人の数だけ存在するのだ。あの時、あの瞬間、確かに彼らは渡海街にいて、確かに日常は存在していたのだ。

このゲームは面白い。でも同時に僕は怖い。猛り狂う名のない土着の神に対する畏れのような感情を、僕はこの作品に対して確かに持っている。これが目覚めさせて良い神だったのかは、もはやわからない。一個の生命として、ある種のこの信仰を、心に住まわせて生きるだけのことなのかもしれない。

それこそが僕の日常で、そして解決不能の謎なのだ。

あ、参拝は150円でできるのでおすすめですよ。

 

150円、プレイ時間約1時間

プレイした日2022/11/17

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